虹色銭湯は、LGBTQ+の人、特にトランスジェンダーの人が大きなお風呂に入るために実施するイベントで、兵庫県尼崎市の銭湯と、特定非営利活動法人MixRainbow®︎からはじまりました。現在全国に広がればいいな、と画策しています。
全国の理解ある銭湯・温泉関係者にご協力いただきながら、営業時間外にお風呂を解放してもらうことで、トランスジェンダー当事者をはじめとするお風呂を諦めていた人に楽しんでいただきます。
特定非営利活動法人MixRainbow®の活動に興味を持って下さり、有難うございます。私たちは、兵庫県尼崎市を拠点に活動をしています。セクシュアルマイノリティの人が、相談することのできる「みんなの居場所」という事業があり、そこには、当事者のみならず、応援者(ALLY=アライ)の方も多く来られます。似た境遇の方同士で話すと様々な課題が見えてきます。当事者の銭湯や温泉の利用については、特にトランスジェンダーの抱える生活上の様々な課題の見える化と、解決への糸口を探ることが必要であると考えております。
もちろん、混浴や貸し切りのお風呂であればトランスジェンダーであっても入湯できます。しかし、非当事者は普段、日常の中で温泉や銭湯への入湯の際、必ず貸し切りにするでしょうか? そして、数少ない混浴施設まで費用と時間を掛けて出かけますか? 正直、難しいことでしょう。
とはいえ、従来からの「男・女」とされている区分で「普通に」利用できている人たちの権利を脅かす行動をしてはいけません。ほとんどのトランスジェンダー当事者はそれを分かっており、身体の性の移行が終わっていなければ、無理矢理自分の性自認である浴室に侵入するというようなことはしません。このような行動はそもそも、自分自身への否定にもつながる行為であり、できないのです。よく引き合いに出されるニュースでは、例えば、”女性のお風呂に男性が女装をして入る”というものがあります。恐らく多くは、非当事者だと思いますが、万が一、本当にトランスジェンダー当事者だとしても、断罪されるべきです。
ところで、トランスジェンダー当事者には、性別の移行前・移行後(手術などを経て戸籍の訂正も終えている)だけでなく移行途中の人が多くいるのをご存知でしょうか。移行途中の人たちは、お化粧のみ、整形や一部の外科手術のみなど、多種多様です。身体的、精神的、金銭的な厳然と存在する高いハードルを乗り越えるため移行を進めています。彼らは移行途中であることを肝に銘じ、例えば外出中はトイレに行かなくて良いように水分を極力摂らない様にしていたり、外出先での銭湯や温泉は行かないようにするために、友人からの誘いを断る等の悲痛な努力をしています。
タイトルの「広いお風呂はきもちいいね」は、多くの方が経験済みでしょう。トランスジェンダー当事者は、誰もが感じるこの「広いお風呂は気持ちいいね」を感じることなく長年過ごさなくてはならないのです。
銭湯や温泉を経営されている方々は、お風呂の良さをご存じだからこそ、多くの方に入ってほしいと考えているのではないでしょうか。もし問題が解決できるのであれば、トランスジェンダー当事者にも入浴してほしいと考えておられるのではないでしょうか? これらの課題を解決しながら、トランスジェンダー当事者が入湯できるようにするにはどうすればいいでしょうか?
ひとつの答えとして、私たちMixRainbow®は施設の休日に銭湯や温泉を貸し切りにして、トランスジェンダー当事者を含めたみんなが「広いお風呂はきもちいいね」と言えるイベントとして、「虹色銭湯」を開催しています。
トランスジェンダー当事者だけを考えても、日本中各地に一定割合で必ず存在するのです。そのような人たちみんなに上述のような経験をしてもらおうにも、兵庫県尼崎市の銭湯1箇所、それも年1回だけでは難しいのです。
そこで、私たちは、各地の銭湯や温泉等施設の方々の理解を得た上で、ALLYの方々も含めて「虹色銭湯」を日本中で開催したい、と考えています。もちろん、従来から入浴されている方に迷惑を掛けることを本望とはいたしません。その上で、温泉や銭湯の良さを知っている施設の方々にご協力を頂きたいと考えています。どうぞみなさん、より多くの方に「広いお風呂は気持ちいいね」を味わって頂くためにご協力をお願いいたします。
最後に、世の中には、個々にさまざまな問題が存在します。トランスジェンダー以外の事情で銭湯やに入ることができない人もいます。この取り組みは、様々なマイノリティが、公共浴場に入れるようになる社会実験的な意味合いもあると思います。
いつの日か、誰もが苦労すること無く、ゆったりとした湯船でくつろげる日が来ることを願って。
特定非営利活動法人 MixRainbow® 理事長 みのり